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二胡の素材
※写真はイメージです。
紫檀の定義
紫檀製の二胡は高級二胡の代名詞として人気なのですが、紫檀の定義はかなり複雑です。
例えば、高級な仏壇に使われる紫檀は、その名もズバリ「ホンシタン」という材木で、マメ科ツルサイカチ属に属します。「ホンシタン」は単に「シタン」とも呼ばれるようで、これこそまさに紫檀ということになります。
楽器の世界では、ギターやバイオリンの部品に使われるローズウッドが同じツルサイカチ属の材木で、ローズウッドを和訳する際にシタンと訳すこともあるようです。
そうすると、ローズウッドなどツルサイカチ属のいくつかの種が紫檀ということになります。
しかし実際には、ツルサイカチ属だけでなく、マメ科インドカリン属のいくつかの種も紫檀として扱われることがあり、さらには他の属のいくつかの種も紫檀として扱われることがあるようです。
このため、紫檀の分類は以下のようになるようです。
- 最狭義の紫檀:マメ科ツルサイカチ属(ローズウッドはその一部)
- 狭義の紫檀:上記に加えてマメ科インドカリン属を含む
- 広義の紫檀:上記2属以外にも紫檀に含められるものがある
さらに複雑なのが、二胡の本場中国では、紫檀についてこれとは別の基準があるということです。
中国で紫檀とされるのは、インドカリン属のいくつかの種で、一般的に紫檀とされるツルサイカチ属の材木は、紫檀ではなく黄檀という材種に分類されるようです。
二胡に使われる紫檀で代表的なものとしては、
インド小葉紫檀、
アフリカ小葉紫檀、
大葉紫檀(血紫檀、血檀)があります。
- インド小葉紫檀は二胡の世界では「これこそが紫檀」という扱いですが、インドカリン属の材木で、中国の分類では紫檀ですが、一般的にはカリンの仲間ということになります。
- インド小葉紫檀に代わって近年紫檀二胡の中心的な素材となっているアフリカ小葉紫檀もインドカリン属の材木で、中国では紫檀ですが、一般的にはカリンの仲間ということになります。
- 大葉紫檀は、インド小葉紫檀やアフリカ小葉紫檀とは見た目が大きく異なります。こちらはツルサイカチ属の材木で、一般的には紫檀に含まれますが、中国の分類では紫檀ではなく黄檀ということになります。
このように、植物の属が異なる材木が紫檀と総称されている状態です。
葉紫の特徴
上記「紫檀の定義」でご説明したように、植物の属が異なる材木が紫檀と総称されている状態ですが、紫檀系の木がいずれもマメ科に属しているという点は共通しています。
マメ科の木は硬く、油分が多く、木の中に養分を運ぶ導管が多いという特徴があります。
そして、木が切り倒されると導管は養分が流れ出て空洞になり、音がその空洞の中でよく響くようになります。
このため、紫檀材は鳴りが良く二胡の素材として適しています。
これより、代表として挙げた3つの紫檀材について、詳細をご案内します。
インド小葉紫檀
インド小葉紫檀はその名のとおり紫檀の一種です。
二胡界では古くから「インド小葉紫檀こそが紫檀」、さらには「インド小葉紫檀でできた二胡こそが二胡」とまで言われるほど二胡に適した素材として愛されてきました。
紫檀材の二胡は、一般的に明るく華やかで艶のある音色を奏でるのですが、インド小葉紫檀の二胡はこのような紫檀二胡の性質を十分に保ちながら、重厚さを兼ね備え耳触りも良いという優れた特徴を有しています。
インド小葉紫檀は、その色や木目の美しさと材木としての硬さや安定度のため、古くから高級家具材などとして高い需要がありました。
その一方で木としての成長の速度が遅く、その高い需要に対して成長と供給が追いつかない状況が続いてきました。
これにより絶滅が危惧されるようになり、この状況を受けて産地であるインドの政府が輸出を完全に禁止するに至りました。
このため、現在では中国の二胡工房が過去に輸入し積み上げた備蓄を切り崩しながら細々と生産している状態で、価格も年々高騰しています。
アフリカ小葉紫檀
アフリカ小葉紫檀はその名のとおり紫檀の一種です。
かつて紫檀二胡といえばインド小葉紫檀製が中心でしたが、インド小葉紫檀の絶滅が危惧されるようになり産地であるインドの政府が輸出を完全に禁止するに至ったことから、その代用材として近縁種のアフリカ小葉紫檀製が紫檀二胡の中心となりました。
アフリカ小葉紫檀は一般的にはパドックと呼ばれ、マリンバの鍵盤に使われることからもわかるように響きの良い木材です。
アフリカ小葉紫檀の二胡は明るく華やかで艶のあるいかにも紫檀という音色を奏でます。
大葉紫檀(血紫檀、血檀)
大葉紫檀は紫檀の一種に含められていますが、インド小葉紫檀やアフリカ小葉紫檀とは植物の属が異なります。インド小葉紫檀やアフリカ小葉紫檀はカリンの仲間の赤味の強い木材ですが、大葉紫檀はローズウッドの仲間です。
色は紫がかった茶色で、芯材が血液の色にも似ているということで血紫檀や血檀とも呼ばれます。
大葉紫檀の二胡は、華やかで芯のある音色を奏でます。