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(株)三栄書房
「ブラストライブ」 2006 Vol.01 (定価 952円 + 税)
誌内「Jマイケル伝説を追え!」にJ,Michaelの特集記事が掲載されました。
 (P100〜P101)
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Jマイケルは天使? /Fシングルホルン バルブトロンボーン ひとりの男の人生を救ったポケトラ 啼鵬さんとJマイケル スペシャル/ YOKANさんがオーボエにチャレンジ トランペット - 川嵜淳一さん トロンボーン - はぐれ雲永松さん バリトンサックス - TPOの武田和大さん TPOのメンバーからJマイケルへ 番外編 チェロを弾いてみよう Jマイケルのフレンチホルンと木村さん(東京佼成) ブラスタ「放課後プロジェクト」を応援するぞ 学校応援プロジェクト 学校応援プロジェクト マーチングブラスが熱い。







Jマイケル伝説を追え!


楽器生活向上班報告その1

このところ楽器店の店頭でひそかにささやかれている謎の名前がある。「J・マイケル」というのがそれだ。本誌編集部内に実在する「楽器生活向上委員会」は、早速秘密特命取材班を結成し、さまざまな「証言」をもとにその足跡をたどっていくうち、取材班は思いがけない体験をすることになった。以下はその一部始終である。


手ごろな価格で、驚くべき品質の秘密は「大和魂」

 その「名前」がそれほどまでに巷間流布(よーするに、みんなのウワサになってるってことね)している理由はただひとつ、その名を冠した楽器が実に手ごろな価格でありながら、驚くべき品質を維持していること。楽器業界の事情に精通する方なら誰でも、それらが最近急激に向上してきた東アジア地域管楽器製造技術のタマモノであることは容易に推察できる…のだが、単にそれらは中国や台湾で製造された楽器をコチラに輸入してきたものではない、ようなのだ。
「Jマイケル、というのは、我々がつけたブランドネームです。それは現在急激に充実してきた中国のフレッシュな管楽器製造の技術力と、我々のコンセプトワークの合体作戦なんですね」
 そう語るのは、マック・コーポレーションの大村社長。かつて某大手貿易商社で楽器の海外への輸出を担当していた大ベテラン。独立して同社をたちあげた。特命取材班は楽器店の流通経路から同社が「J.マイケル」に関する重要な機密を保持していることを察知し、早速単独インタビューを試みたのである。
「ある時、中国の楽器製造技術が非常に充実してきたことに気付いたのです。それからひらめいたのが、情報の充実した日本の企画を、製造力にめぐまれた中国で具体化する、という国際的コラボなんです」
 ただ単に中国製の楽器を輸入する、というのではなく、あくまでもこちらの企画をあちらで具体化する、という、海をはさんだ協力体制が「J・マイケル」というブランドを生み出した、というのだ。
「ひとくちに『協力体制』といっても、実は大変なんですよ(苦笑)。日本の技術力の根幹にあるのは、仕事への誠意や技術革新への自発的熱意、そして会社組織への忠誠、という、いわば合理主義とは別の次元にある、充実した精神的風土でした。精密機械のひとつである楽器製造には、なによりそういった『風土』が必要不可欠。向こうはやはり『外国』ですから、上から押しつける、のではなく、一緒になって現場で悪戦苦闘しながらいい楽器を造る喜びを肌で感じてもらうことから始めました」
 単に「命じて造らせる」のではなく、「ものづくり」に対するモチベーション(動機づけ)の段階から深く現地に入り込んで指導する。いわば「大和魂」の輸出である。しかし、それは苦闘の連続だった。最初の頃は流通に流す以前に物理的精度の問題や音程、仕上げ等での問題が生じたという。
「泣きの涙で、どこから見ても新品そのものの楽器を粗大ゴミ捨て場に捨てにいったことも何回もありました(苦笑)。辛かったですよ」
 その結果、いや、現在もさまざまな現場からの意見を活かしながら、海をはさんだ熱い技術協力は続いているという。
 しかし、こちら(特命取材班)が聞きたいのはそんなビジネス上のサクセスストーリーだけではない(東アジア地域での企画&技術のコラボレーションとしては、最近では数多くの成功例がある)。
 なぜそこに「J・マイケル」という、明らかな欧米系の名前が冠せられたのか、という素朴な疑問なのだ。
 そもそもそれは、人の名前なのか。それともなにか、別の意味合いがあるのだろうか。


J. マイケルは実在した!

「この名前は、実在するふたりの人物からいただいたんです」
 大村氏は語る。
「新しくうまれるブランドに、せっかくだからなにか素晴らしい名前をあたえたい。弊社の英国の代理店をおさめていたジョン・ニューマンという方とそんな話をしていたら、彼がこんな昔話を教えてくれたんです…」
 ニューマン氏の生まれ故郷はイースト・サセックス州のロザーフィールドという小村だった。その村にジェイムス・マイケルと呼ばれる金髪の美少年がいた、という。
「彼の父親も同じ名前でした。欧米ではよくあることですよね、いわゆる二世ということです。だから区別するために彼のことをJ・マイケル、と村人達は呼んだのです」
 なぜ村びとはそのように呼び習わしたのか。その金髪の美少年には大変な音楽の才能があり、その天使のごとき美声のおかげで、地元の聖デニス教会の聖歌隊の、今でいうところの「スーパーソリスト」として絶大な人気を誇っていたからなのである。
 その美声はやがて大聖堂の司教の耳をも魅了し、少年J・マイケルはその司教のつとめる大聖堂へと勧誘される。親しい友や家族との辛い別れをのりこえて都会での音楽修行に旅立ったJ・マイケル少年は、やがて立派な音楽家となって村に戻ってきた。その手にもっていたのは、都会の修行で身につけた角笛。
「その角笛の音色に魅せられて全国から音楽好きが集まり、村は音楽の街として大変栄えたそうなのです。その話をきいて、これだ!と思いました」
 日本が世界に誇る技術が中国の風土で実を結び、欧州の伝説を冠して画期的な「プライスブレイカー」として世界に羽撃く。甦ったマイケル少年の魂は、楽器を始めようとする人たちへのなによりの応援のシンボルとなった感がある。
「もちろん、まだまだやらなければいけないことは沢山あります。精度の点でも音色の練り上げの点でも、世界中のプロフェッショナルから意見を聞いて、それをどんどん反映させているところなんです」
 ユーザーからの意見には広く耳を傾ける。それがマイケル少年の魂を受け継いだ同社の心意気、なのである。


マイケル、出現?
ファンタジーが始まった!!

  と、そこまで記した時、取材班の周りで異変が起きた。
「そこがいいんだよね」
 あれ?君は誰?
「そんなことはいいから、ちょっとその目の前にあるケースを開いて欲しいんだ」
 あ、あのさあ、今ちょっと取材中で、目の前にあるのはこれから撮影しようと思っているホルンなんだけど。これ、このブランドの名前の元になった人物が得意だったというホルンで…
「しかも、珍しくちょっと小振りのFシングルなんでしょ?」
 ありゃ、よくご存じで。
「そりゃあそうさ。だってボクがそのブランドネームの張本人ジェームス・マイケル、つまりJ・マイケルなんだからね」
…(無言絶句)
「あれ、黙っちゃった」
 そりゃそうでしょ、いきなりそんなこというんだもん。
「ともかくケースを開けて。そう、となりにあるフルダブル(F&B♭)とくらべてごらん」
 あ、これ確かに小さいわ。まるでキンダーホルンみたい。
「でしょ?キンダーホルン、というのはドイツ語で『子供用のホルン』という意味だけど、それはドイツ語文化圏でよく使われる楽器なんだ。普通は小振りのB♭管が主流だけど、これは珍しいFシングル。J・マイケルというブランドは、世界中の名器という名器をお手本にして造っているから、ドイツの名器にこういうスタイルがあったんだね」
 なるほど…


マイケルの力説。
「可愛いF管から始めよう!」

「フルダブルの方はやはりまだまだはっきりいって改良の途中なんだけど、このFシングルは自分でいうのもナンだけど、おすすめだね。最近は世界中でB♭シングルでホルンを始めるのが流行しているらしいけれど、やはりホルン特有の音色は長いF管を吹きこなすところからうまれる、とボクは信じている。ボクがロザーフォードの村にもってかえったのはナチュラルホルンだったけれど、やはりF管だった。このコンパクトなF管もそれと同じ。コンパクトにみえるけれど、いわゆるF管チューバや、Fロータリーをひいた状態のテナーバストロンボーン、4番管をおさえた状態のユーフォニアムと同じ長さなんだよ」
 へえ…
「長い管だから音は確かに当たりにくい。まずは音を簡単に出す、という観点からB♭シングルで始める、というのも悪くないだろうけれど、長い管をしっかり鳴らす、という訓練はホルン吹きには絶対必要!だって、そもそもヴァルヴなしで立派に演奏できる楽器なんだから。実際に本番で使うかどうかはともかく、こういったFシングルを吹きこなす訓練をしっかりしておくことはいい経験になるはず」
 なるほどね…
「せっかくボクの名前を使ってもらうからには、ただ単に『値段が手ごろ!』というだけじゃつまらないし、ちょっと恥ずかしいよね?だから、時々は技術開発の人たちとディスカッションして、ちょっとマニアックなアイテムにも挑戦してもらうんだ。たとえばね…」
 どこからか語りかけてくる、J・マイケル少年の声が語る物語はまだまだ続くが、紙面が尽きた。なんと彼は、コンパクトなFシングルに続いて、あっと驚くマニアなモデルにまつわる物語を教えてくれたのである。